blendy99: “ 緑川百々子 ”
seepassyouagain 将来の夢など持ったことがない。屋根の下で眠り腹を空かせず殴られず怒鳴られず触れたくない者に触れなくていい生活をめざして人生を構築した。それが私の欲望だったからである。「夢に向かい努力する若者」「何者かになりたい若者」というものを見たことがないのではないが、その内面はあまりに遠く、都市伝説のように感じる。夢は任意に見たらよろしいし、何者かというのがなんだか私は知らないが、それがあなたの欲望であるならばしたがえばよいと思う。どうやらそういう話ではないから若者は苦悩し中年は屈折するらしいのだが(文学にもよくそういう題材がある)、私には彼らの言うことがわからない。欲望があれば叶えたらよろしい、それしか私にはわからない。欲望は私の神である。私は欲望という信仰のない人のことがわからない。嫌いな人間と口を利きたくない。同じ空間にいたくない。業務上の会話と常套句を組み合わせたメールがぎりぎりだ。私は軽々しく人を誘い、平気で「あなたは素敵です」などと言う。それは私が選んだ相手だからだ。嫌いな人は目に入れたくない。ろくでもない発語は耳に入れたくない。知らない人はどうでもいい。知らないんだから。私の感情と私の身体は、ただ私の選んだ人たちのためにだけ使われる。そのために人生を構築した。あとは好きな本を読んでチラシの裏に字を書いていれば世はすべてこともなしである。